残された医療器具が静かに語りかけてくるK整形外科

北海道は広大である。
北海道を旅行しようとしたならば、一日や二日で回ることが絶対に不可能ということを理解しなければならない。あの広大な大地を巡ろうと思うなら、それなりの覚悟も必要だ。自分は一応北海道を一周し、各地の廃墟を見て回ったが、ある場所からある場所に行くのに300キロ離れているなどということは、北海道なら当たり前だった。しかし、北海道だからこそ見られる風景というものもある。北の大地は様々な表情を旅人に見せてくれることだろう。
今回紹介するのは、そんな広大な大地の一角に存在する、ある廃病院の記録である。この廃墟があるのは、メロンと炭鉱が有名で、残念なことに財政破綻をしてしまったある市である。あまり人気のない場所に、隠れるように建っていた。
では、見ていこう。

実はこの廃墟を発見したのはだいぶ昔の事になる。始めて北海道に上陸したのはもう5年以上前のことだ。
この廃墟は当初なんの用途の建物なのかわからなかった。

入ってすぐに受付と待合室のようになっているホールになっている。

整形外科と言われているが、街のお医者さんといった感じが漂っている。

さらに奥に入っていく。

全体的に劣化が激しく、床も天井もボロボロとなっている。

診察室といった場所だろうか。

どこか懐かしいような感じがする。

こんな雰囲気の診療所に行った思い出がある。
遠い日の記憶だ。

隣の部屋に朽ちたレントゲン機器が放置されていた。

精密機器であるレントゲン機器だが、この場所に当時の清潔感は無い。

敗戦当時のベルリン市内のような階段を登って二回へ。

フラッシュを焚いて地下に通じている階段を見る。この奥には行きたくない。確実に虫がいる。それだけはかんべんだ。

これまたいい感じに朽ちている二階に到着した。

しかし、開きっぱなしのドアの向こうに、異空間のような清潔感の漂う部屋があることに気づく。

なるほど、ここは手術室のようだ。

タイルの床と壁に囲まれたその空間は、当時の姿をそのまま今に伝えているようだった。

古めかしい医療器具、手術台、電灯。どれも趣のあるものばかりだ。

ガラスケースには主の帰りを待ち望む手術道具達が光り輝いている。

いつ終わるとも分からない長い時間を過ごしている。

ものすごい感じの廊下を進み別の部屋へ。

ここは病室だろうか。

この部屋に入ってみよう。

この部屋は執務室のように見える。

院長先生のお部屋という感じだ。

ここは雨漏りにかなりやられている。

さらに奥の部屋。

リハビリ室のようだ。整形外科というものを調べてみると、運動器官の病気や骨折などを治療し治す医療なのだとわかった。リハビリ室があるのは当然だ。

それにしてもこの場所の朽ち方は凄く良い。

この場所のように、廃墟美というものは思いもかけないタイミングで目の前に現れる。その気まぐれに出会えるかどうかは運次第だ。

北海道廃墟旅はまだ始まったばかりだ。そろそろ次に行く時間だ。

この廃墟を取り巻く環境は大きく変わった。時代が代わり、行政が破算し、人が居なくなった。
だが廃墟に流れる時間はその内部に取り残されている。
廃墟に行けばその時間が静かに語りかけてくる。当時の記憶を見せてくれるのだ。

忘れないでくれと言われているような気がする。
そんな廃墟の声を聴くために、今日もまた廃墟を旅する。
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- 2015/09/22(火) 13:00:22|
- 廃病院
-
| トラックバック:0
-
| コメント:4
はじめてコメントさせていただきます。
詩的な文章に引き込まれいつも興味深く拝見しています。
かつて確かに人の暮らしがあり時の移り変わりと共に朽ち果てていく寂寥感を感じます。
我々が暮らしているこの場所も数千年後には廃墟になっているのかも知れませんね。
未来の人もやはりノスタルジーを感じるのでしょうか?。
- 2015/09/30(水) 12:05:07 |
- URL |
- 結城有無之助 #-
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結城有無之助さん
はじめまして、東雲みょんです(^ー^)
この世にある全てのものは、始まりがあれば終わりがあるという法則からは抜け出せないでしょう。なので、千年二千年後には今ある世界は全て過去の遺物になるでしょうし、人類の終末も必ず訪れます。
あとに残るのは、ただ広大な廃墟だけですね
- 2015/10/01(木) 00:52:47 |
- URL |
- 東雲みょん #-
- [ 編集 ]
東雲みょん様、
以前雄別炭鉱を訪れた経験があるのですが怖い噂があったので病院には入らず付近を散策しただけでした。こちらのブログで病院内部の美しさを知りました。機会を作って再訪したいと思います。
更新を楽しみにしています。
- 2015/10/01(木) 10:02:56 |
- URL |
- 結城有無之助 #-
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