忘れられない廃への郷愁【産業遺産】矢納水力発電所

夏である。
埼玉県の山奥深くにこの廃墟は存在する。それはあたかも隠されているかのようにひっそりとしていた。
今回紹介するのは【矢納水力発電所】という廃墟である。1914年、明治時代に運転をはじめて依頼、その年に始まった第一次世界大戦と第二次世界大戦の2つの大戦を経験し、周辺地域の電力の安定化に貢献した後、1966年に下久保ダムが建設されたことにより、長きにわたる運転の歴史に幕を閉じ、現在に至っている。

幹線道路から一歩外れ、渓谷に降りる階段を降りて行くとすぐに特徴的なレンガの建物が見えてきた。

さらに降りていく。

どうやらこれが矢納水力発電所のようだ。

自然の中に溶けこむような雰囲気がある。いい廃墟には必ずこんな独特の雰囲気がある。

そしてこの廃墟はそんな雰囲気通りの魅力を持っていた。

そういえばこの廃墟は東電の管理の下に置かれているということである。それにしては全くの手付かずではないか。この頃は全国の廃墟が残業遺産として見直されてきているのに、ここはあまりにも手付かずだ。

まぁ、誰も居ないほうが廃墟としては魅力的なのだが。では、さっそく内部に入ってみよう。

レンガの積み方や窓枠の作り方など、どれも戦前からの歴史を思わせるものだ。

いい廃墟の見つけ方の参考に一つ。いい廃墟には良い窓枠がある。

そしてその窓から差し込む光の演出がある。

奥に見えるのが入ってきた扉だ。内部にはかつて発電の為に様々な機器があったのだろうが、今は何もない。

あるのは止まっているようでゆっくりと流れる悠久の時間のみ。

何もなくたって充分。何かを感じ取れればそれでいい。

広いフロアの奥にも何かあるようだ。

レンガではなく木造の建築。奥にはぶち抜けで緑が見える。

今にも崩れそうな階段がある。登ってみる。

階段の上にあった部屋。柔らかな光が差し込む部屋。

誰からも必要とされなくなった部屋で静かに白いカーテンは揺れていた。

部屋からは広いフロアが見下ろせた。モダンな感じが見て取れる。

窓。見方を変えるとぜんぜん違うものとなる。

不思議な模様が見える。どのような用途で使われていたのかは分からない。

部屋の中には少しの生活感。

朽ちる世界と普遍の光。

先ほどのぶち抜きの場所から外に出て後ろから建物を見てみる。どうやらこの木造の部分は後から増築したようだ。

換気口だろうか。驚くことに今でもカラカラと回り続けていた。

窓。夏の強い日差し。

広いフロアで謎の階段発見。下に降りてみよう。

コンクリートの部屋だ。ちなみに真っ暗である。地下壕を思い出すところだが、そうなると虫が怖い。

鉄製のパイプが下にあった。落ちたら間違いなく死ぬ。ちなみに携帯は圏外。てか死体とかあるんじゃないか・・・

これが作られたのはいつだろう?明治の時代にこのような建築技術があったのだろうか。

上に戻る。そしてまた窓。

夏の日差しが急に弱くなった。どうやら雲が出てきたようだ。そろそろ帰る時間と教えてくれて居るのだろうか。

では帰ることにしよう。

スポットライトの当たらない産業遺産。だがその歴史と魅力は僕達を惹きつける。

そしてまた、静かな時間が渓谷を包んでいく。
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すべての産業遺産に幸あれ。
- 2013/11/23(土) 18:00:07|
- 産業遺産
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| トラックバック:0
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| コメント:1
静岡県の大井川にもかつて東海製紙が所有していた水力発電所は二つありましたね。うち一つはレンガで造られた発電所でしたが老朽化を理由に解体されました。
もう一つは河川敷近くにあるコンクリートでできていますが中は農機具などが置かれていますが、茶畑の中にありその姿は異様・・・です。
- 2014/03/07(金) 08:37:26 |
- URL |
- フーガ #43mdhuVM
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