沖縄に散った幾万の英霊、県民に謝す沖縄海軍根拠地隊司令部壕
前回の
【第三十二軍司令部地下壕跡】【伊原第一外科壕】【宮古島の特攻艇秘匿壕】からの続きです。

沖縄戦では主に陸軍部隊が主力になり守備に就いていた。だが陸軍だけでなく海軍部隊もまた沖縄の防衛任務にあたっていたのだ。これは、太田実海軍少将の指揮する沖縄根拠地隊約一万名ほどであり、一部陸軍の指揮下に入り戦闘を行なった。しかし、この部隊はもともと飛行場設営隊などであり、ろくな陸戦兵器は持たなかった。そこで飛行機用の機銃や銃剣を木の棒の先端に付けた槍など、創意工夫した武器を用いて戦った。
沖縄戦も終盤に入り首里が陥落すると、第三十二軍は南部に撤退するが、海軍部隊は司令部を置いている小禄から南部に撤退することを拒否する。これは米軍が奇襲上陸してしまったため、包囲されることとなり退路が遮断されたためである。海軍将兵は果敢に防衛戦を展開するが徐々に消耗し、6月13日頃に大田司令官以下参謀首脳部が自決、壊滅した。
この壕では発掘作業により、遺骨が八千体ほど見つかったそうだ。まさに足の踏み場もないほどだ。
上の図は小禄にあった海軍司令部壕の周辺で起きた戦闘の推移。米軍が上陸し退路が遮断されたのがわかる。これにより海軍部隊の戦線突破は不可能になった。(既存の図に筆者が書き足している部分がある。)

現在の様子。ここは司令部壕の前にある慰霊碑である。

実際に壕の中から発見されたもの。手前は日本軍の97式手榴弾。その後ろに見える丸いものは戦時急造の陶製手榴弾である。他に食器や薬缶など生活の跡がうかがえる。

左は航空機用機関砲を取り外して使用したもの。右は銃剣を取り付けた槍。

手榴弾各種。

本題の地下司令部のほうに入っていこう。入口には千羽鶴が沢山かけてあった。

壕内は電気が通っている。階段を下りて地下に行く。

薄暗い通路。

コンクリートでの補強は戦後に行われたものだろう。長い通路がある。
戦中、この通路には足の踏み場もないほどの戦死傷者で埋め尽くされていた。

会議室。司令長官以下ここで作戦会議をした。

当時の様子を絵にしたもの。

碍子が残っている。この碍子の形は本土のものとなんら変わらない。

また狭い通路を行く。

この部屋は将校の部屋だったらしい。

この看板の通りここで手榴弾自決が行われた。

壁に残された傷跡は、手榴弾の破片によってできた自決当時のものである。かつて確実にここで誰かが死んだのだ。

通路はまだ奥に続く。

大田少将が自決した場所。壁には「醜米覆滅」と書いてある。

別の角度から撮ったもの。

大田少将の辞世の句が書いてある。
「大君の御はたのもとにししてこそ 人と生れし甲斐でありけり」とある。

兵員の詰めていた部屋。

発電機がこの場所に置いてあったようだ。

壕を掘削するときに使ったつるはし。

棚などの窪み。

兵員の待機所。ここで立ったたまま出撃を待った。

この壕には未だに発掘できていない場所がいくつかある。そこではまだ遺骨が見つかるという。
以上である。
4回にわたって沖縄戦の特集をしてきたがいかがだったろうか。沖縄戦では日米将兵の間で激戦が演じられ多くの人命が失われた。さらに沖縄県民を巻き込んでしまったため、県民に犠牲者が出たばかりか、戦後に続く遺恨を生んでしまった。
この戦争で多くの物語が生まれた。しかし、その多くは風化しつつある。この事実を忘れ去ってしまったらいったいなんのために沖縄で多くの人間が死んだのか分からなくなってしまう。この事実を語り継ぐことが後世に生きる我々の務めであり、戦死者への供養なのだと思う。国のために、故郷のためにと戦って死んだ多くの人間がいたことを忘れてはならない。
最後に、海軍司令部壕で自決した大田司令官が本土の海軍次官に送った決別電報の一説を紹介したい。
大田司令官はなによりも県民が軍に率先して協力してくれたこと、また県民に多大な損害が及んでしまったことといった内容の電報を送っている。そしてその最後はこう締めくくられる。
「
沖縄県民斯ク戦へリ
県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」
現代に生きる我々は、この言葉を忘れてはいまいか。
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- 2011/04/20(水) 20:09:25|
- 戦争遺跡・地下壕
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【米海軍艦艇に対する戦果1945年1月~5月】
潜水艦スウォードフィッシュ機雷喪失
駆逐艦ハリガン(甲標的説あり)機雷大破破棄
掃海艇スカイラーク(魚雷艇説あり)機雷沈没
LCI-42 又はLCI(G)-84 震洋激突沈没
駆逐艦ロングショー海軍砲台攻撃大破破棄
油船及び曳船各1隻 海軍砲台攻撃沈没
(・o・)沖縄海軍斯ク戦ヘリ
o(^-^)o 航空部隊、潜水艦は含まれていません。
- 2011/04/29(金) 21:02:17 |
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- 一所懸命 #-
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一所懸命さん
これは沖縄根拠地隊による戦果ですかね。
中でも特出すべきは海岸砲台により駆逐艦を撃沈しているところですね。最後の最後に海軍魂を見せてもらいました。
御冥福を祈るとともに海軍戦死者の健闘をたたえましょう。
- 2011/05/01(日) 18:23:59 |
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