山間部にひっそりと残る謎の壕陸軍第一航空軍司令部壕

埼玉県の山間部にこの壕は存在する。実を言うとこの壕が本当に「陸軍第一航空軍司令部壕」かは定かではない。それどころか間違っている可能性の方が大きい。自分もこの壕を調べてみる過程でこの第一航空軍司令部壕であるという記事を見つけたのでそうつけているだけだ。理由は多々あるが、一番は埼玉の山間部のこんな場所になぜ第一航空軍の司令部があるかという点だ。
ここで少し、陸軍第一航空軍とはなんなの?というところを説明する。
陸軍航空軍が創設されたのは1942年のことだ。この前には飛行師団というものが沢山あり、その上の専門の上級司令部が無い状態であった。そこで、その飛行師団をいくつかの軍という単位で統一指揮する目的で航空軍が創設されたのだ。この航空軍は6個あり、第一航空軍は主に東日本を担当空域としていた。西日本は第六航空軍が担当している。それ以外は主に海外に司令部があり、満州、中国、ビルマ、ニューギニアといった具合に担当空域は分かれていたのだ。その後、戦局が悪化し、44年にはマリアナから飛び立ったB-29爆撃機が帝都東京を空襲するようになる。第一航空軍はこれらの爆撃機を相手として、帝都防空などに活動することになる。西日本では沖縄に結集したアメリカ艦隊に対し、特攻作戦が開始された。菊水作戦である。これに第六航空軍があたっている。
1945年4月、沖縄戦の開始されたこの月に、日本軍首脳部は来る連合軍の日本本土上陸を前にどのような防衛体制を引き、どう戦うかを定めた決号作戦を採択する。この決号作戦に際し、陸軍航空隊を本土防空のために一元指揮する目的で航空総軍が創設される。それまでの航空軍はこの指揮下に入り、第一航空軍も指揮下に入った。航空総軍の決号作戦時の主な行動は、その持ちうるほとんどの航空機を特攻作戦に使用するという壮絶なものだったが、結局本土決戦は回避され、終戦となった。
これが、陸軍第一航空軍であるが、どう調べてもこの埼玉の奥地に司令部が移ったという記録に当たらないのである。なので、標題も仮なのである。これから覆る可能性があるのだ。
上の写真はその壕の入口周辺。何もない。司令部なら庁舎跡の一つくらいあってもいいと思うのだが。

この場所は山と山の間の谷間になっている。地下壕を作るならうってつけだろう。

壕口はすぐに発見することができた。しかし、板で厳重に封鎖されていた。
2005年に鹿児島で発生した中学生一酸化炭素中毒死事件をきっかけとして全国の地下壕が総点検されているようだ。その流れを受けてこの壕も封鎖されてしまった。地下壕は人の手が何も加えられなければどんどん劣化していき、崩落などの危険性は増していく。だが、全てを危険だからの一言で封鎖してしまってよいものだろうか。

正直なところ駄目かな、と思っていると一か所の壕口に目がとまった。

上、開いてますよ!
たぶん自然崩落で壕口の上部分が開いてしまったのだろう。これはラッキー。さっそく突入する。

どんなもんだろうと思うと、中は意外に広い。一本の長い坑道が掘削され、そこから左右に枝分かれしているようだ。崩落が少しあり、水たまりがある。

ちなみに入ってきた壕口。

十字路になっている場所。

右の部分はすぐに行き止まりになっている。これは終戦になり掘削途中で放棄されたのか、経緯は分からない。

これは左部分である。通路が続いているのが分かる。よく見ると段差があり、上に行けるような感じになっている。だが、そちらには行っていない。もしかしたら通路があるのかも知れない。

先ほどの主坑道に戻り進む。するとまた十字路が現れた。

まっすぐ進んでみる。

崩落か埋め戻しかは分からないが、壕口は土で埋まっていた。なので引き返す。

先ほどの十字路を右に行くことにする。すると、通路が続いていた。

だいぶ崩落が激しい。一酸化炭素より崩落のほうが危険だ。

壕口があった。だが、これも板で封鎖されていた。
と、ここでカマドウマらしき生物が壁から突然飛んできたので脱兎のごとくその場から退散し、怖くなった自分は一目散に入口へと緊急脱出を図ることにした。この壕は大ゲジはいないのだが、やたらとカマドウマがいるのだ。バルサンを炊きたくなる。

そして最初の壕口まで戻ってきた。

なぜかは知らないが、入口近くにショットシェルと思しきものが落ちていた。これはいったい・・

先ほどの壕から出て近くにある別の壕に入る。こちらは封鎖されていない。この一帯には沢山の壕が密集しているらしく、通路壕まである。

この壕は一本の坑道が30メートルばかり掘削されているだけであった。

壕最深部より入口を見る。

今回はこれで終了である。
これらの壕が本当に陸軍第一航空軍司令部壕であるかは分からなかった。だが、民間の地下壕にしては確かに大きすぎるようである。この壕の詳細を知っている方がいれば教えてもらいたいものである。そして、まだ見ていない箇所があるので機会があればまた行きたいと思う。
現在も人知れず山間部に、その壕はある。

陸軍第一航空軍司令部壕の壕内図です。縮尺などは適当です。
にほんブログ村このごろ忙しくて更新できてないな・・・
- 2011/07/22(金) 18:25:05|
- 戦争遺跡・地下壕
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| コメント:9
そのとーり。陸軍第一航空軍の地下司令部だそうです。
この壕、掘削途中で終戦をむかえており、完成すれば坑道17本のひじょうに規模のある壕となっていたはずです。また、周りには、貯蔵庫壕などが、たくさん残っているそうです。
う~~ん…僕はカマドさんもだめかな。
- 2011/07/28(木) 17:09:24 |
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- oryuu #-
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oryuuさん
やはり陸軍第一航空軍司令部なんですかね。確かに太い坑道が何本もあり、まだ発見できていない壕や貯蔵庫壕、それらが山一面に存在しているようです。また調査にいって山狩りをしたいと思います。
カマドさんは割と大丈夫になったんですが、あいつら地下壕にいると巨大化するらしくて、怖いんですよね。群集しているし。突然落ちてくるし・・・
- 2011/07/28(木) 18:24:25 |
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- 東雲みょん #-
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百穴ついでに、寄って見ました。
本壕はすぐに分かったのですが、単独壕が見付かりませんでした。
最後の地図に壕口位置を、加筆してくれませんか?
ちなにみ、先の不明な箇所にはメインに沿った、長い壕が有り、測量の失敗と思われる高低差が2m近くもありました。
一見突き当たりの、壁にも見えてしまいますが、登れます。
しかし、あのかまどさんは、なんなんですか!4cm近い大きさと、密集率は!
- 2011/09/14(水) 22:59:21 |
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- yakumo #-
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yakumoさん
お久しぶりです!
やはり先がありましたか。実は封鎖される前、昔懐中電灯も持たずに友達と入ったことがあるんです。その時は確か階段か段差らしきものを下りた記憶があるので、たぶん不明だった先の坑道から今回探索した坑道に出たんだと思います。ですので先があることはある程度わかっていました。
今回行かなかったのは絶対虫が群衆してやがると思ったからです。でもカマドウマばっかりで最悪の虫大ゲジはいなかったんですよね。でも、なんでカマドウマは地下壕だと巨大化するんでしょうか?ふざけてるんでしょうか?
とりあえず加筆というか新しく作ってきます。実は単独壕以外に交通壕や他の未確認壕も多数存在しています。
- 2011/09/15(木) 00:24:41 |
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- 東雲みょん #-
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ショットガンの空薬莢のようですね、林道沿いでもこのサイズの空薬莢を見つけたことがあります。・・・・・・って狩猟の時にショットガン使っていいのかよ?
- 2015/04/15(水) 16:22:04 |
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- フーガ #43mdhuVM
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通りすがりの者です。興味深く拝見しました。
第一航空軍の下に第62航空地区司令部がありました。もしかするとその司令部壕かもしれないと感じました。
- 2017/04/02(日) 01:29:58 |
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- 通りすがり #JNpw6Eaw
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